*2005.10.21
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「あなたはずるい人ね」
そう、彼女は僕に言ったのだ。彼岸を少しばかり過ぎた季節、放課後の教室。忘れ物を取りに入ったそこを出ようとした矢先、先客である彼女が僕に、ハッキリそういった。
「ずるい?」僕が?
思考回路は彼女の言葉の意味を全く汲み取れない。
僕は入学以来彼女と口を利いた覚えが無かったから、そういった言葉を彼女から受けることが不思議でたまらなかったし、僕は自分が「ずるい人間」というカテゴリーに当てはまるなんて考えても見なかった。僕は、いったって普通な一学生だ。どちらかと言えば彼女の方がこの「学校」という中では特質的な存在で。長い黒髪に大きい目。白い肌。そして必要最低限の表情と言葉だけで生きる彼女。けれど、彼女の生き方とは裏腹に周囲の、彼女に対する興味は必要最低限のものではなかったようだ。
何度か先輩に声をかけられている様子を見たし、同時にそれに対する興味すら沸かないのであろう彼女の仕草も僕は見ていた。だから僕は彼女と関ることなどないと感じていたのだ。彼女と僕は違う世界の人間なんだと。
「そう、ずるいわ。貴方は卑怯よ。」
彼女のその言葉にも僕が「意味が分からない」という顔をすると、彼女は益々怪訝な顔をして僕にこう話し出した。
「あなたはこっち側の人間のはずよ。人付き合いなんて、学校なんて馬鹿げてると思っているはず。けれどあなたはそれを上手く隠して、生きている。だからずるいのよ。それは多分一生治らないわ。」
そうやって話す彼女は、言葉を追うごとに怒っているようにも見えた。
それを僕は、新種の生物を発見した学者の様な気分で見て、だんだんと「彼女の言う通りだな」と納得し始めた。
そして「君がなぜ怒っているのかは分からないけれど、その通りだよ。」と答えた。
数分後、彼女が僕に怒っているわけが分かった。
彼女は「私はあなたみたいに上手く生きられない」そうだ。
けれど僕が、彼女が言うように「上手く生きているように見える」としたら、それは「僕がこのレールから落ちても何も変わらないと思っているから」だと言ってやりたい。
けれど僕はレールから落ちることさえも面倒なのだ。
(01:37) /
短編小説 /
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